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HERMESへの課題申請

UPDATE: 30-OCT-2003

申請書の書き方のポイントあれこれ


HERMESは全国共同利用に開放されていますので、国公私立大学あるいは公の機関に所属する研究者であれば、どなたでも実験の課題申請をする事ができます。
HERMESでの実験を行うには、まず、他の中性子分光器と同様、所定の申請書を用いて課題申請を行い、年1回の課題採択委員会(NSPAC)の審査を受ける必要があります。

HERMESは金研の装置ですが、課題の申請は物性研が管轄しています。申請された課題は、2月上旬に開催される採択委員会で基準に基づき公平に審査されます。

申請申し込み先
原研の装置へ同じ課題を申請する事は禁止されています。見つかった場合は、両方rejectされる場合があります。

課題申請の受付は年一回で、物性研の締め切りは11月です。 正確な時期については、ネットで確認するか申請先にお問い合わせください。

物性研に対する申請は、平成17年度分からonline申請のみになりました。メールや郵送での申請はできません。



最近の採択率は約80%ですから、当然課題がreject される場合もあります。平成18年度の採択率は約70%でした。
最近の課題の動向

審査は非常に公平で厳正です。審査委員自身の課題が全滅する、なんて事もよくある事です。装置責任者でも同様で、むしろ厳しく審査されている気配があります。別な言い方をすれば、良い研究課題であれば、初めての人でもマシンタイムを確保できる、という事です。



審査の流れ

2月上旬に審査委員会NSPACが開催され、すべての課題はここで採択の可否を決定されます。
申請書は、事前に一人の委員と二人の査読者によって、5点満点で採点され、三人の平均値が得点となります。
採点が大きく分かれた申請は、NSPAC当日にそれぞれの分野の専門家からなる委員によって再度審査され、委員の判断で採点が修正されます。
採点決定されると、装置ごとに分類され、得点順にならべられます。
装置責任者は、得点順に日数を決定していきます。




申請する際、事前に装置責任者に連絡する必要はありません。もちろん、技術的な問題についての質問がありましたら、お気軽にご連絡ください。


申請の際、HERMESグループのメンバーが申請者に含まれている必要はありません。いれたところで審査には影響しません。また、申請グループにHERMESメンバーが参加していたとしても、実験の代行はいたしません。


申請書にはHERMESでの実験が必要な理由を明記します。すなわち、なぜその物質で構造解析する事が重要なのか、とか、その物質で構造が決まるとどんな進歩があった事になるのか、を強調しないとよい採点はもらえないでしょう。「この物質は〜として重要である。したがってこの物質の構造を明らかにする必要がある。」では全然だめです。結晶構造、磁気構造を決めて、それから何をしたいのか、までしっかり記述しましょう。構造を決める必要性は自明ではありません。


平成17年度分の申請から、HERMESと三軸分光器といっしょに申請できなくなりました。ダイナミクスに興味があって、ついでにHERMESで構造も、っと軽い気持ちで申請する事はもはやできません。ダイナミクスを主とする研究であっても、静的構造研究の意義をしっかり書かないとHERMESでマシンタイム確保は難しいでしょう。


材料開発、産業応用が中心となる課題の場合は、応用分野である事を特に強調すべきです。審査員は基礎科学の分野の人が多いので、磁性物理などの基礎科学の課題とごっちゃにされると、に不利になるからです。構造が分かると材料としてどのような改善が期待できるのか、といった情報が重要です。


HERMESに限りませんが、実験計画はできるだけ具体的に書きます。具体性のない計画では、採点はてきめんに厳しくなります。「HERMESを用いて結晶構造を決定する。」だけでは十分なマシンタイムはもらえません。 申請の際、測定温度を明記しましょう。課題採択会議の際、実験が可能かどうかの判断に必要です。また、なぜその条件での測定が必要かもわかるようにすべきです。理由無しに温度など条件だけ書いても、結局最低限の日数まで削られでしょう。転移などの温度変化のない物質で低温測定が必要な場合は、説明が必要です。


試料の組成を明記します。ソフトマターなどで略称、通称だけ書いてある申請がありますが、マシンタイムの算定ができないので、日数配分の際に不利になる可能性があります。Hを含む場合は、D化するかどうかを明記します。もっともD化しないとデータにはならないと思いますが。


また、混晶系、ドープ系の場合で試料数を明記していない申請がありますが、これもマシンタイム算定ができないので不利になる可能性があります。平成17年度用申請書では、この点を明記しないといけないようになっています。


Sm, Gd,Euなど吸収の強い元素を含む場合は、測定は難しくなります。測定の実現の可能性を明記しましょう。ご自分の試料の吸収を確認しておきましょう。特にNatural B, Cdの場合は同位体に置換する事を確実に要求され、NaturalではRejectされる可能性が非常に高くなります。なお、同位体に置換すると申請しておきながら、natural で実験する事はできません。それは反則です。


極端な条件は実施不可能な場合があり、科学的な価値が高くても採択されない場合がありますので、事前に調べる必要があります。たとえば、4,5T以上の高磁場、高圧での実験はHERMESでは不可能なので、「技術的に不可能」として、マシンタイムはもらえない可能性があります。希釈冷凍機は使用可能ですが、HERMES装備品ではないので、ユーザー自身で手配する必要があります。採択されたからといって、希釈冷凍機の使用が保証されたわけではありません。


閲読者、審査委員は中性子の専門家なので、次のようなコメントを長々と書く必要はありません。うかつに書くと申請書の水増しにみえるかもしれません。
 「中性子はX線と異なり軽い原子を見る事ができる。」
 「中性子の散乱長は原子番号に依存しないので、原子番号の接近した元素を分離できる。」
 「中性子の核散乱強度はQに依存しないので、高角まで測定できる。」
 「中性子は磁気モーメントを持つので、磁気構造を決定する事ができる。」


HERMESで温度因子を正確に決めるのは不可能です。温度因子測定を真正面から取り上げると、装置が不適切としてrejectされる可能性があります。たとえ採択されても、よい結果を出す事はできないのは明らかなので、十分な時間は与えられないでしょう。


これまでに中性子実験の実績があれば、それを明記します。たとえ中性子での構造解析が未経験でも、放射光での構造解析の経験があれば、書いておいたほうがよいかもしれません。なぜなら、同じテーマがぶつかった場合、経験のあるユーザーの方が有利になる場合があるからです。


前年度の申請書を、そのまま再申請に使うのはだめです。審査員は案外前年度の申請を覚えているので、進歩無し、あるいは、手抜きと判断され、rejectされる確率がぐんと高まります。特に、点数が低かった申請書は全面的に書き直しましょう。コピペだとそのままreject送りにされるかもしれません。


同じ課題の多重申請はご法度です。たとえば、金研共同利用と物性研共同利用で同じ課題を出す、原研協力研究と物性研共同研究に同じ課題を出す、といった事です。NSpackでは多重申請もチェックされます。発覚した場合、両方の課題ともrejectされる場合があります。
 もちろん複数の施設・装置に申請をする事は可能ですが、その場合、実験目的が本質的に異なっている必要があります。課題のタイトルが違っていても、得られる結果が本質的に同じなら、ただマシンタイムが欲しいだけの多重申請とみなされるでしょう。たとえば、HERMESで粉末回折を申請し、Fonderで単結晶回折を申請するのはOKですが、粉末回折で複数の装置に申請したらおそらくひっかかります。ただし、ねらっているQ領域が全く異なる、強磁場など極端条件が必要など、別な装置・施設を使わなければいけない明確な理由があるのなら問題ありません。


NSPACの席上、評価の分かれた申請をひとつひとつ再評価します。この際、委員からよくいわれるコメントはたとえば以下のようなものがあります。申請書を書く際にはじめから注意しておきましょう。

「この系で、これまでにわかっている事の記載がない。」「これまでわかっている事と、この申請書の研究との関係がわからない。」

「この物質の結晶構造、あるいは磁気構造を決定したら、何が新しいのか、何が面白いのかわからない。」

「この系はとっくに中性子で測定されていて、論文もでている。申請者の勉強不足である。」

「『これまでやられていないので測りたい』だけでは、この系の研究がなぜ面白い事がわからない。委員に面白さを伝える努力をしていない。」

「面白いのはわかるが、この申請書の実験だけでは最終的な結果を得るには不十分である。どこまでどういうスケジュールでやるのか書くべきだ。」


委員からこのコメントがでると、かなり厳しいことになります。

要求日数の考え方

標準的な測定時間は、結晶構造解析で1試料3〜5時間、少数の結晶パラメーターの相対変化を追うだけなら、1点1〜3時間。従って、室温での結晶構造解析ならマシンタイム1日で5、6個が可能です。一方、磁気構造解析は6時間程度。磁気散乱の温度変化も測定するなら、1試料1日程度必要です。磁気モーメントが1muB以下だと、さらに時間が必要になります。あたりまえですが、マシンタイム1日とは24時間のことで、通常午後3時から翌日の午後3時までです。





試料などについて

標準的な試料の量は、粉末で約3cc(バルクで約1.5cc)です。

U など特殊な物質をのぞいて、実験はvanadiumフィルム製円筒セルを使用します。標準セルは、金研所有のものをお貸しすることができますが、数にかぎりがあり実験終了後にお返ししいただきます。

実験終了後、粉末試料は放射化しているのでとりだせません。少なくとも数日実験室内で冷却する必要があります。通常は、冷えたところで装置グループが郵送で返却します。申請書には「保管」としておけばよいでしょう。

試料だけ送るので測定してください、というのはだめです。研究者としての見識が疑われるでしょう。

実験に用いる液体ヘリウム代は半額ユーザーの負担になります。ご注意ください。



当然ながらRejectされた課題は実施不可能です。ただし、翌年へ向けてのテスト実験は、マシンタイムが許す範囲で可能です。




Vega(KEK)かHERMESか

つくばの KENS にはVegaという非常に優れた高分解能中性子粉末回折装置があります。VegaHERMESは特性と目的が異なりますから、課題申請をする場合、どちらに出すのがよいか考える必要があります。申請すべき装置を誤るとrejectされ、1年待たなければいけません。

以下にそれぞれの装置の得意技の簡単な分類を下に説明します。

1:磁気構造解析ならHERMES

2:複雑な結晶構造解析(単斜、三斜)は絶対Vega。HERMESではやっても無駄骨になります。

3:温度因子を正確に決めるには絶対Vega。HERMESでは不可能です。

4:だいたい構造が分かっていて、多数の試料の構造パラメーターだけを決めるだけならHERMES

5:まったく結晶構造が不明な場合はVega

6:結晶構造解析の専門家のサポートが必要なら、Vega

7:液体、アモルファスのS(Q)をlow-Qで測定するならHERMES


8:初心者が気軽にやりたいならHERMES
KENSの強度について間違った印象を持っている方がいますが、Vega,Siriusの強度はHERMESを凌駕しています。また、ユーザーサポートについてはvegaの方がしっかりしています。最近は磁気構造解析も可能という事ですので、どちらの装置に申請するか、よく考えて判断する事をお奨めします。





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