FullProfはフランスLLBのJuan Rodrigez-Carajalが開発した、磁気構造解析を含む汎用RIetveld解析プログラムで、無料で配布されています。ヨーロッパでは非常にユーザーの多いソフトです。Mac, Unix, Linuxでも動くはずですが、Windows版がつかいやすいでしょう。
このページでは、HERMESユーザーのために、FullProfを用いた磁気構造解析についてしっているかぎりのことを説明します。 |
目次概要ダウンロード マニュアルなど関連ファイル Reference 解析のTips集(Update: 10-APR-2008) |
概要HERMESのデータの構造解析に多く用いられているRIETANは、磁気構造解析では構造によっては使えない場合がけっこうあります。すなわち、RIETANで解析可能なのは、磁気モーメントの向きをUp, Downのみで表すことができる一軸性のcommensurate磁気構造に限られ、スクリュー、ファンなどの長周期構造や、commensurateでもcant構造のように磁気モーメントの向きが変わる場合にはRIETANは使用できません。 この点、FullProfは、長周期構造をはじめほとんどすべての磁気構造でRietveld Fittingを行う事が可能ですから、もし万が一使いこなす事ができるならば、非常に有力な武器になるはずです。 また、単結晶実験で得られた積分強度を用いてModel Fittingをすることも可能ですし、Dicvol. フーリエ変換など様々な便利な機能が付加されています。 Windows版Fullprofを使うと、パラメーター入力からfitting、結果のプロット、構造の表示までを一つのGUI画面で行えます。出力形式はIgorあるいはKaleidaGraph形式ファイルにできるので、なにかと便利です。 初期のFullprofはおそろしく難解で、日本にいて使いこなすのは至難の業でした。しかし、今はGUIの導入により以前よりはそうとう使いやすくなっています。 これまでFullprofの理解を難しくしていた最大の理由は、自分が書いたファイルが自分の考えている磁気構造を正しく表しているかを確かめる方法がなかったことでした。なので、たとえFittingがよくあっても、結果に自信をもてませんでした。でも、今のWindows版では、計算結果に対応する磁気構造をすぐにグラフィックしてくれるので、自分の思っているとおりの構造になっているか、簡単に確認できます。このため大間違いを検出することができます。 ただし、入力ファイルの超難解さは変わりませんし、日本でのユーザーの少なさも相変わらずです。マニュアルも更新されていません。このため最新バージョンであっても、結果が間違っていることを簡単に検出できるようになっただけで、どこが間違っているかを見つけること、正しく動かすことは簡単になっていません。トラブルの原因は入力ファイルごとに違いますので、自分自身でかなり苦労しなければ使えないソフトです。GSASの方がらくだ、という人もいます。 なお、モデル構築ソフトSARAhが非常に重要です。SARAhを使えば、目的とする磁気構造に対応した正しい入力ファイル(*.pcr)を自動的に作成してくれるので、ユーザーはそれを核反射用入力ファイルの後ろに張り込むだけですみます。初心者には理解不能だったpropagation vetorとサイト数の定義、空間群の定義の整合性もSARAhがちゃんとやってくれています。さらに、SARAhの出力PCRファイルをよく読むことで、pcrファイル中の磁気散乱用パラメーターの意味もかなり理解できるでしょう。もちろん SARAhでの計算の意味をよく理解する必要があります。操作は簡単ですが、原理はすげえ難解です。
FullProfのマニュアルより、 |
DownLoad以下のサイトからWindows版を落としてつかうのが賢明のようです。Windows版の場合、インストーラーを実行するだけでOKで、特別なインストール手順はありません。 Fullprof メインサイト(WIndows, Linux) 以前は以下のサイトからMac版がダウンロードできましたが、今はきえてしまったようです。どうやらあきらめてWindows版をつかうしかないようです。 LLB粉末回折解析ソフトリスト(いろいろあるけど、古い) 初期のFullprofはひどく敷居の高いソフトでしたが、今はWindows版はGUIコントロールなので、非常に使いやすくなっています。 |
Manualなど関連Fileマニュアルには以下のサイトのExamplesからpdfで落とせます。 Fullprof Examples,Tutrials これとは別に、古いマニュアルでHTML版Fullprofマニュアル((1998年版)があります。 FullProfの解読を面倒にしている原因の一つは、ファイル上のパラメーターの名前とマニュアル上の名前が一致していない事にあります。この点、HTMLなら一応リンクをはっているので、パラメーターの意味を探すのが少し楽になります。もちろんGUIを仕えばこの問題はかなり解消されます。 Frame版Fullprofマニュアル(1998年版) さらに、FullProf関連の様々な関連ソフトが以下のサイトで公開されています。ただし情報が古いみたいです。 LLB 粉末回折 Fullprof関連サイト 最新版Fullprofでは、計算結果の磁気構造を表示してくれるソフトが内蔵されているので、自分の考えたとおりのモデルになっているかどうかを簡単に確かめる事ができます。これにより、Fullprofの最難関だった点が解消されました。 また、ロンドン大学のDr. A. Willsが開発したプログラムSARAhも重要です。 SARAhは、群論的考察を用いて、結晶対称性に対して最も安定な磁気構造モデルを探査してくれる非常に洗練されたプログラムです。非常にFullprofと相性がよく、SARAhで計算された磁気構造モデルに対応する入力大ル(PCRファイル)を自動的に作成してくれるので、Fullprofには必須プログラムでしょう。ただし、SARAhはWindows版しかありません。(Dr. WillsはMac使いなんですが。)。しかたがないので、不本意ながらWindowsマシンを購入する事にしました。 |
ReferenceFullProf自身に関して参照すべき論文は、以下の論文だけです。 Physica B192(1993) 55-69 Dr. Rodriguez-Carvajal自身に問い合わせたところ、FullProfの結果を論文にするときは上の論文をreferするように、と返答がありました(19-MAY-2000)。Full Paperを書く予定はあるが、いつになるかわからないのだそうです。 その後にでたもう少しあたらしいreference。 Rodriguez-Carvajal, J. Recent Developments of the Program FULLPROF, in Commission on Powder Diffraction (IUCr). Newsletter (2001), 26, 12-19. |